憲法解釈にモヤモヤを感じる集団的自衛権

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憲法解釈にモヤモヤを感じる集団的自衛権

安全保障関連法案が強行採決されました。「強行採決」と言っても、しょせん最後は多数決で決めなければならないのだろうから、強行と付け足すことに意味があるのか?なんて思ったりする。

参考リンク: 安保法案で野党が批判する「強行採決」とは? 問題点はどこにあるのか

上のリンク先を見ると、通常は議論を重ねた上、「全会一致」で成立するのだが、与野党の主張が真っ向から対立し、妥協の余地が無い場合に「強行採決」となるようです。が、「強行採決」という言葉はマスコミが作ったものなので、この言葉自体には大した意味は無いと私は思う。

集団的自衛権について読書した

一体何が良くて、何が悪いのか?よくわからんので、「集団的自衛権」について書いた本を読んだ。選んだ本はこれ。

著者は自民党の石破茂さん。なぜこの本を選んだかというと、政府案とほぼ同じだろうと思ったから。まずこの本を読めば政府がやりたいことがわかり、それに対して野党はなぜ反対しているのかという事も理解しやすいだろうと思ったから。

内容紹介はこのようになっている。

集団的自衛権の行使を容認すべきか否か。真っ向から意見は対立し続けているが、そもそもその由来や意味をどれだけの国民が知っているのだろうか。政界きっての安全保障政策通が、その成り立ち、日本における解釈の変遷、リスクとメリット等々、あらゆる疑問に正面から答える。「地球の裏側に行って戦争する権利だ」「日本が戦争に巻き込まれる」といった誤解、俗説の問題点を冷静かつ徹底的に検討した渾身の一冊。

石破さん自身、より多くの人達に集団的自衛権を理解してもらおうと書かれたのではなかろうかと思う。私のように勉強不足でも分かりやすく書かれています。反対派の方も、政府や自民党の考えとほぼ同じと思われるので、まずはこれを読んでみるのも良いのではないでしょうか。

集団的自衛権は国連憲章に謳われている

まずは国連憲章から少々引用。戦争放棄は日本だけの特別なものでなく、「国際連合の目的と両立しない武力行使は慎まなければならない。」となっています。国連加盟国は原則として戦争禁止となります。実際には紛争やら戦争も起こっていますが、、。

国連憲章 第2条4項
すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。

次いで個別的自衛権と集団的自衛権について書かれた51条。

国連憲章 第51条
この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持または回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。

というわけで、個別的自衛権はもとより集団的自衛権も認められた権利であり、日本以外では当たり前に行使できる権利なのである。ではなぜ日本では認められなかったのか?

憲法解釈の問題

戦争放棄と戦力を持たないことを謳った憲法九条に違反するという解釈であったので、今までは集団的自衛権の行使が認められなかったのである。(権利は持っているということで良いのかな?)

で、憲法九条はこれ。

憲法第九条

  1. 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
  2. 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

1項の方は国連憲章第2条でも謳われているように、日本だけではなく世界的にも戦争禁止となっているので、特段変わった事ではない。他国では見られないのが、2項の「戦力を保持しない」という部分です。このために、自衛隊は合憲なのか違憲なのか?と判断が分かれたりするわけです。そして政府の解釈も幾度となく変遷しているわけですね。

憲法九条を素直に読めば、「戦争を放棄したので、戦力を保持しない。」ということになります。この憲法九条の最初の解釈は下記です。自衛権を否定しないが、そのための戦争も放棄していたのが当時の解釈です。

「戦争放棄に関する規定は、直接には自衛権を否定していないが、第 9 条第 2 項において一切の軍備と国の交戦権を認めない結果、自衛権の発動としての戦争も、交戦権も放棄した」(吉田茂首相の発言。第 90 回帝国議会衆議院議事速記録第 6 号 昭和21年6月26日p.81.)

参考リンク

その後、更に解釈の変更を重ねて現在に至っています。そして今回の集団的自衛権の行使を認める法案について石破さんの著書にはこのように書かれています。

憲法第九条のどこを読んでも、「集団的自衛権は行使できない」という論理的な根拠を見いだすことはできません。

あれ、それって単に憲法を制定した当時に想定していなかったから根拠が無いのは当たり前では?憲法に書かれていない事に対してここまではよくて、ここからはダメって解釈をする事に対して違和感を感じます。

まとめ

一般的に誤解を招きそうなところや、あやふやな部分があれば、「そこははっきりさせましょう。」ということになって契約書や仕様書に謳います。少なくとも私が関わっている業務に関してはそうです。学校の校則なんかも書いていない事はやりたい放題になってしまうので、事細かに「そんな事まで書いてるの!」などと感じるような事まで書き加えられている場合もあるでしょう。

しかし、憲法についてはあやふやな部分をはっきりさせよう!という動きにはならずに、解釈で対応しているわけですね。Q & Aの形で下記リンク先に説明がありますが、この中から【問5】と【問6】を引用する。

【問5】 なぜ憲法改正しないのか?
【答】 今回の閣議決定は、国の存立を全うし、国民の命と平和な暮らしを守るために必要最小限の自衛の措置をするという政府の憲法解釈の基本的考え方を、何ら変えるものではありません。必ずしも憲法を改正する必要はありません。

【問6】 今後、更に憲法解釈を変更して、世界各国と同様に国際法上合法な集団的自衛権の行使を全面的に認めるようになるのではないか?
【答】 その場合には憲法改正が必要です。なぜなら、世界各国と同様に集団的自衛権の行使を認めるなど、憲法第9条の解釈に関する従来の政府見解の基本的な論理を超えて武力の行使が認められるとするような解釈を現憲法の下で採用することはできません。

【問5】が今回の場合になるわけだが、今回は改憲の必要はなく【問6】の場合は憲法改正が必要になる。この2つの線引きはどこになって、その根拠が何なのかが私には理解しがたい。

今回の法案に反対なわけではないが、本を読んで少し調べてみたら憲法解釈についてモヤモヤ感満載になってしまいました。本来なら、そのつど曖昧な部分をはっきりさせ、時代に合ったように憲法改正していくのが望ましいのではないでしょうか。

憲法改正のハードルが高すぎるので、こんなことになってしまうのだろう。


もう一冊こいつも読んだ。こちらには自衛隊には戦争をする能力が無いことも書かれています。「戦争法案」などと言われて徴兵制が復活するなんて話もあるようだが、そんな事をしてもメリットが無い事は私でも理解できます。

反対派の本も読もうかと思ったが、Kindle版では読みたくなる本が見当たらなかったので、今のところ読んでいない。

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