高度プロフェッショナル制度について書かれた「今後の労働時間法正当等の在り方について(報告)」を読んだ

高度プロフェッショナル制度について書かれた「今後の労働時間法正当等の在り方について(報告)」を読んだWeblog

昨今のニュースで話題になっている「高度プロフェッショナル制度」について、私もサラリーマンですからちょっと関心があります。但し、私の年収はこの制度の対象となる年収1075万円に遠く及ばないことを先に申し上げておきます。じゃあ、関係無いやん!(笑)

いや、将来的には年収条件が下げられるだろうともっぱらの噂なのでやっぱり他人事ではない。と、思ったけど既に定額制働き放題の身なのでまず関係なさそうであったりする。(^_^;)

参考リンク

上記リンク先にあるように、賛否両論イロイロあるが比較的批判的なニュースが多いように感じる。しかし最近はある一部分だけを取り出し、その部分だけをクローズアップしたような報道も見受けられるので実際のところはどうなのよ?と感じてその元ネタを探してみた。

厚労省のサイトで報告書を発見

厚生労働省労働政策審議会建議「今後の労働時間法制等の在り方について」を公表しますというページで今後の労働時間法制等の在り方について(報告)というPDFファイルを見つけたので読んでみた。

この報告書は平成25年9月27日から22回に渡って労働政策審議会労働条件分科会において議論されたものであります。そして「高度プロフェッショナル労働制」だけでなく、全部で6つの項目について報告されている。この6つの見出しは下記のようになります。

  1. 働き過ぎ防止のための法制度の整備等
  2. フレックスタイム制の見直し
  3. 裁量労働制の見直し
  4. 特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設
  5. その他
  6. 制度改正以外の事項

出典: 厚生労働省ホームページ「今後の労働時間法制等の在り方について(報告)(PDFファイル)」

1~3は現行制度などを見直して長時間労働を抑制するよう検討された項目。4の「特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設」が今話題になっており、「残業代ゼロ法案」とも言われる新しい制度の創設について。5, 6はその他付随する項目といったところでしょうか。

特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)とは?

この制度について、上記リンク先のPDFファイルから多くを引用させていただく。

時間ではなく成果で評価される働き方を希望する労働者のニーズに応え、その意欲や能力を十分に発揮できるようにするため、一定の年収要件を満たし、職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者を対象として、長時間労働を防止するための措置を講じつつ、時間外・休日労働協定の締結や時間外・休日・深夜の割増賃金の支払義務等の適用を除外した労働時間制度の新たな選択肢として、特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)を設けることが適当である。

なお、使用者代表委員から、高度プロフェッショナル制度は、経済活力の源泉であるイノベーションとグローバリゼーションを担う高い専門能力を有する労働者に対し、健康・福祉確保措置を講じつつ、メリハリのある効率的な働き方を実現するなど、多様な働き方の選択肢を用意するものである。労働者の一層の能力発揮と生産性の向上を通じた企業の競争力とわが国経済の持続的発展に繋がることが期待でき、幅広い労働者が対象となることが望ましいとの意見があった。

また、労働者代表委員から、高度プロフェッショナル制度について、既に柔軟な働き方を可能とする他の制度が存在し、現行制度のもとでも成果と報酬を連動させることは十分可能であり現に実施されていること及び長時間労働となるおそれがあること等から新たな制度の創設は認められないとの意見があった。

対象業務

具体的には、金融商品の開発業務、金融商品のディーリング業務、アナリストの業務(企業・市場等の高度な分析業務)、コンサルタントの業務(事業・業務の企画運営に関する高度な考案又は助言の業務)、研究開発業務等を念頭に、法案成立後、改めて審議会で検討の上、省令で適切に規定することが適当である。

対象労働者

対象労働者の年収について、「1年間に支払われることが確実に見込まれる賃金の額が、平均給与額の3倍を相当程度上回る」といったことを法定した上で、具体的な年収額については、労働基準法第14 条に基づく告示の内容(1075 万円)を参考に、法案成立後、改めて審議会で検討の上、省令で規定することが適当である。

本制度の対象となることによって賃金が減らないよう、法定指針に明記することが適当である。

健康管理時間、健康管理時間に基づく健康・福祉確保措置(選択的措置)、面接指導の強化

<健康管理時間>
本制度の適用労働者については、割増賃金支払の基礎としての労働時間を把握する必要はないが、その健康確保の観点から、使用者は、健康管理時間(「事業場内に所在していた時間」と「事業場外で業務に従事した場合における労働時間」との合計)を把握した上で、これに基づく健康・福祉確保措置を講じることとすることが適当である。

<健康管理時間に基づく健康・福祉確保措置(選択的措置)>
健康管理時間に基づく健康・福祉確保措置について、具体的には、制度の導入に際しての要件として、以下のいずれかの措置を労使委員会における5分の4以上の多数の決議で定めるところにより講じることとし、決議した措置を講じていなかったときは制度の適用要件を満たさないものとすることが適当である。

  1. 労働者に24 時間について継続した一定の時間以上の休息時間を与えるものとし、かつ、1か月について深夜業は一定の回数以内とすること。
  2. 健康管理時間が1か月又は3か月について一定の時間を超えないこととすること。
  3. 4週間を通じ4日以上かつ1年間を通じ104 日以上の休日を与えることとすること。

以上、結構な部分を引用しましたがこれでもまだまだ省いているので、全文を読むなら今後の労働時間法制等の在り方について(報告)を参照ください。

感想

まず第一に感じたのは、「高度プロフェッショナル制度」だけでなく現行制度についても、こんなに事細かく法律で決めなければダメな世の中になってしまったのか!ということ。使用者、労働者ともにいわゆる常識的な範囲で働かせたり働いたししていれば法律に頼らなくても良いのだろうけど。

第二に感じたこと。なぜ使用者側がこの制度に賛成なのか?この制度を常識的に受け止めると、成果が高い人には高い報酬を払わなければならなくなる。平均的な成果と比較して倍の能力があれば2倍の報酬を受け取れるのが当たり前な考えだと思うが、使用者側がそんな報酬を払うと私には思えない。実質的には評価した成果の方が残業代を支払うよりも報酬としては安くなるような評価になると想像します。

即ち、今まで残業をして出していた成果と同じくらいの成果をこの「高度プロフェッショナル制度」で出したとしても、残業代として貰った方が報酬が高くなるであろうということです。

なぜなら、現在でも肩書きが付いて残業代が付かなくなった場合、手取りが少なくなってしまう場合が多いからです。肩書きが付くってことは評価されているのでしょうけど、報酬が減ってしまうという事実が既にあるからです。

使用者側が報酬を上げてトータルの人件費が増えるような制度を採用するとは思えません。中には本当に成果が高い人の報酬を増やす企業もあるかもしれませんが、そういった企業はごく一部だろうと思います。

三つ目。一方で労働者側にも問題が有る場合がある。まあ、はっきり言って「仕事をさっさと片付けて早く帰るより、少しゆっくりして残業をした方が手取りが増える。」こういった考えで働いている人も一部にいるということもわかります。こういう人達が1075万円も年収があると思えないが、将来的にはこういった方々を成果主義で一網打尽にしたいのかもしれません。

だいたい仕事をさっさと終えられるような能力がある人には沢山仕事が回っていき、早く帰れる状況にならない場合が多いというのが日本のサラリーマン社会の現状と思われるけど。

それともう一つ。労働時間短縮をするのであれば、こういう制度を考える前にサービス残業の実態を調べ、サービス残業撲滅に繋がるような制度を先に作った方が良いのではないでしょうか。

まとめ

上の感想に書いたように穿った見方をしなければ素晴らしい制度だと思います。プロ野球選手ほどではなくとも、成果の高い人は平均的な人の2倍でも3倍でも報酬が貰えるようになり、さらに会社の業績もアップしてWin-Winの関係になれれば全く問題無いと思います。ただ、実際はそうならないと思っている人が多いので反対意見の方が多いのでしょう。

どうしても使用者側の立場が強いので、成果をどのように評価するかを取り決めしなければならないと思うが、そのことについてこの報告書には書かれていなかった。それから業務が多様化・複雑化してきているので成果を正しく評価できる使用者がいるのか?って問題もあろうかと思います。まあ、使用者も労働者もお互い誠実に働くのが一番ですね!

おまけ

厚労省のサイトで高度プロフェッショナル制度と検索したら今後の労働時間法制等の在り方について(報告書案)というファイルが出てきました。

「報告書案」なんて民間企業なら公開しないと思うけど、これは敢えて公開しているの?それとも情報流出ってやつか??厚労省のサイトを管理している人が素人とは思えないから敢えて公開しているのだろうね〜。(ホンマか?)

それと今後の労働時間法制等の在り方について(報告)の1枚目はスキャナで読み込んだと思われる汚れがあるけど、これも「なんだかな〜・・・。」って感じ。

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